「債務整理をすると、預貯金が手元からなくなってしまうのではないか?」と心配される方がおられます。
確かに自己破産の場合、預貯金の一部が失われる可能性がありますが、それ以外の債務整理手続きでは預貯金に影響はありません。
以下で債務整理による預貯金への影響をみていきましょう。
このページの目次
1.任意整理、個人再生なら預貯金に影響しない
債務整理手続きの中でも「任意整理」または「個人再生」の場合、預貯金に対する影響はありません。
任意整理とは、債権者と個別に交渉をして借金を減額してもらう手続きです。
個人再生は、裁判所に申立をして借金を大きく減額してもらう手続きです。
これらの場合、財産をすべて持ったまま手続きを進められるので、高額な預貯金があっても失われません。
2.個人再生で多額の預貯金があると返済額が高額になる
ただし多額の預貯金のある方が個人再生するときには、「支払金額」が上がる可能性があります。
個人再生をすると、借金を元本ごと大きく減額してもらえますが「債務者が所持している財産評価額までは、最低限支払わねばならない」制限が適用されます。これを「清算価値保障原則」といいます。
つまり高額な預貯金があると、預貯金の評価額までしか借金が減額されないので、結果的に支払い額が大きくなる可能性があるのです。
たとえば500万円の借金のある方に預貯金や他の財産がなければ100万円にまで借金が減額されますが、400万円の預貯金があれば400万円までしか減額されません。
なお家族名義の預貯金は評価の対象外です。自分名義の高額な預貯金のある方が個人再生を検討するなら注意してみてください。
3.自己破産で多額の預貯金があると没収される
自己破産の場合、一定以上の預貯金があると債権者へ配当されてしまいます。
各裁判所によって基準額が異なりますが、「20万円」が基準とされるケースが多数です。
20万円が基準の場合、「すべての金融機関の預貯金の総合計」が20万円を超えると、超えた分が債権者に配当されて手元からなくなります。1つの銀行では20万円以下でも他行の口座を足して20万円を超えると換価されるので注意しましょう。
一方、預貯金総額が20万円以下であれば、換価の対象にはならないので手元に残せます。
また家族名義の預貯金は対象になりません。
なお現金であれば99万円まで手元に残せるので、破産前に預貯金を下ろして現金で持っておくのも良いでしょう。ただし財産隠しは許されないので、対応に迷ったときには弁護士に相談してみてください。
高額な預貯金を守りたい方は、任意整理や個人再生を利用するようお勧めします。状況によってとるべき債務整理の方法は異なりますので、まずは一度、弁護士までご相談ください。