経営している会社が破産したら、代表者(経営者)本人にはどういった影響が及ぶのでしょうか?
- 自分も破産しなければならないのか?
- 経営者の財産はどうなるのか?
- 会社の負債が自分に及ぶ可能性はないのか?
- 家族に迷惑が及ぶのでは?
さまざまな心配が頭をよぎるでしょう。
今回は法人が破産したときに代表者にどのような影響があるのか、金沢で企業法務に積極的に取り組む弁護士が解説します。
このページの目次
1.法人が破産しても必ずしも代表者が破産する必要はない
会社が破産しても、必ずしも代表者は破産する必要がありません。
法律上「代表者個人」と「会社」は別人格だからです。
会社の借入と個人の借入は別勘定なので、基本的に会社の負債は代表者に及びません(ただし連帯保証人になっている場合には及びます)。
法人の滞納税や滞納社会保険料などが代表者に及ぶ可能性もありません(こちらも保証している場合には及ぶ可能性があります)。
会社が債務超過で支払が不可能となっていても、代表者個人が支払不能な状態になっていないなら個人は破産する必要がないのです。
「会社が破産したら経営者も破産する」とは限らないので、まずは押さえておきましょう。
2.代表者が破産しない場合、法人破産による影響は?
法人が破産したら、代表者にはどういった影響が及ぶのでしょうか?
代表者個人が破産しない場合には、代表者の財産や負債には影響が及ばず個人資産は失われません。
たとえば代表者が個人名義の自宅に住んでいる場合、会社が破産しても自宅はなくなりません。個人名義の預貯金や車も失われず、それまで通りの生活が可能です。
なくなるのは「会社の財産と負債」「会社そのもの」だけです。
ただし代表者としては、会社の破産手続き進行に協力する必要があり、債権者集会に出席するなど時間と労力がかかります。また会社破産によって職を失うので、就職や起業を検討しなければならないでしょう。
3.会社破産にともなって代表者が破産しなければならないケースとは
以下のような場合には、法人の破産に伴って代表者も破産しなければなりません。
3-1.会社の負債を連帯保証している
日本の中小企業の代表者は、会社の負債を「連帯保証」しているケースが非常に多くなっています。政府系の公庫や金融機関からの借入をする際、代表者による個人保証を求められるためです。
代表者が個人保証している状態で会社が破産すると、代表者は会社の代わりに負債を返済しなければなりません。代表者にも返済が不可能であれば、代表者個人が破産する必要性が発生します。
3-2.会社の運転資金のために個人借入をしている
会社のために個人保証をしていなくても、運転資金のために代表者が個人的な借入を繰り返しているなら注意が必要です。
たとえば消費者金融やビジネスローンなどを使って個人的に借入をして会社に貸し付けたりしていると、会社が立ちゆかなくなると個人的な借入先へも返済できなくなります。
そうなったら個人が破産しなければならない可能性が発生します。
4,代表者が破産した場合の影響
もしも会社の代表者が破産したら、どういった影響が及ぶのでしょうか?
4-1.個人資産がなくなる
代表者個人が破産すると、代表者個人の資産は失われます。生活に最低限必要なものだけが残り、自宅や車、保険や預貯金、株式などはすべてなくなるので引っ越しを余儀なくされますし、貯蓄のない0からのスタートとなってしまいます。
ただし配偶者名義の財産には影響がありません。
4-2.一部の職業を制限される
代表者の破産手続きの最中は、一部の職業や資格が制限されます。制限されるのは以下のような職業です。
- 弁護士や税理士などの士業
- 警備員
- 保険外交員
- 宅建業の資格
- 旅行業の資格
- 貸金業の資格
- 質屋
- 調理師
- 騎手
他にもいろいろあります。ただ一般的な仕事には支障がないので、該当しない場合には気にする必要はありません。
4-3.ブラックリスト状態になる
個人破産すると「信用情報」に破産情報が登録されていわゆるブラックリスト状態になります。借入の審査に通らなくクレジットカードの発行や利用もできなくなるので、一定期間は不便な生活となるでしょう。
4-4.就職は可能
会社が破産すると職を失うことになりますが、破産手続き中でも就職は可能です。
むしろ就職しないと生活を維持できないので、できるだけ早めに転職活動を行って内定を目指しましょう。
4-5.起業、役員への就任も可能
いったん会社経営に失敗して破産しても、再度起業できます。破産者でも役員に就任できますし新たな会社の代表者になれるので、安心しましょう。
6.破産以外の選択肢もある
代表者が連帯保証や個人借入をしている場合でも、破産を避けられる可能性があります。
任意整理や個人再生という別の債務整理方法があるからです。これらの方法であれば、自宅や預貯金などの財産を残せますし資格(職業)制限もありません。ただし破産と違って手続き後の返済が必要なので、負債の額が大きすぎる場合や支払能力がない場合には利用できません。
7.金沢で「破産」を考えたら弁護士までご相談下さい
会社が破産するとき、代表者にどのような影響が及ぶかはケースバイケースです。個人保証の有無、負債の金額などによっても異なります。
適切に対処して不利益を最小限度にとどめるためには専門家による助言が必須となるでしょう。金沢で経営難に陥り会社の破産を検討されている経営者様がおられましたら、当事務所の弁護士までご相談下さい。