会社破産では利害関係者も多く、複雑な対応が必要となりがちです。
きちんとポイントを押さえて対応しないとスムーズに進みにくく、失敗する可能性もあるので慎重に対応しましょう。
今回は法人(会社・事業者)破産で注意すべき8つのポイント・注意点を金沢の弁護士が解説していきます。
このページの目次
1.財産隠しをしない
法人(会社・事業者)が破産すると、法人(会社・事業者)の資産はすべて失われます。不動産や預貯金、保険などのさまざまな資産があっても完全に「0」になるので「もったいない」と考えてしまうのも自然な感情です。
そこで「家族名義」や「知り合いの名義」に変更して財産隠しを行う方がおられます。しかし破産法上「財産隠し」は厳しく禁止されており、発覚すると破産管財人が「否認権」を行使して、財産隠しの贈与や売買を「なかったこと」にしてしまいます。否認権が行使されると名義変更の相手にも迷惑をかけますし、訴訟などに発展して大きなトラブルになるケースも少なくありません。
また財産を故意に毀損、処分する行為も禁止されます。もしもそういった行動が発覚したら、破産管財人から経営者個人が損害賠償請求を受ける可能性もあります。
財産隠しが悪質な場合には「詐欺破産罪」が成立し、懲役や罰金の刑罰を科されるリスクも発生するので、絶対にやってはいけません。会社を破産させるなら会社の財産はあきらめましょう。
2.偏頗弁済をしない
会社を破産させるとき「偏頗弁済(へんぱべんさい)」にも注意が必要です。偏頗弁済とは、一部の債権者を優遇して支払いをすることです。たとえば特に親しくしていた取引先にだけ優先的に支払ったり担保権を設定したりすると、偏頗弁済となります。
偏頗弁済も破産法によって厳しく禁じられています。違反して特定の債権者のみを優遇すると、やはり破産管財人によって「否認権」を行使されてトラブルになりますし、「詐欺破産罪」となる可能性もあります。
破産するときには「特定の債権者にだけ支払う」のは厳禁です。
3.役員報酬についての注意点
会社を破産させるとき、役員報酬の取扱いにも注意が必要です。
代表者には会社に対する役員報酬の請求権がありますが、こちらを他の一般的な債権に優先して支払うと「偏頗弁済」となる可能性があります。
経営状態が苦しいにもかかわらず役員報酬だけ受け取ったとなると、破産管財人からも厳しく対応されるでしょう。
破産を検討しているなら、役員報酬が発生していても安易に支払を受けてはならず「他の債権者と平等」に扱いましょう。
4.雇用関係の整理について
会社が破産すると従業員の雇用を維持できないので、解雇しなければなりません。
勤務先が破産して職を失うと生活が危うくなるため、従業員にとっては死活問題です。解雇の際には適切に対応しないと大きなトラブルに発展するでしょう。使用者としては、丁寧な説明を中心とした誠実な対応をすべきです。
ただしあまり早期に従業員に破産を明らかにしてしまったら、従業員の口から情報が外部にもれて大騒ぎになってしまう可能性もあるので「時期」についても細心の注意が必要です。
破産するときの従業員の雇用関係の整理については、破産を告げるタイミング、説明の方法や内容、未払賃金の取扱い、解雇予告手当など、すべてに関して予測や計画を立てて慎重に対応する必要があるでしょう。
自己判断で対処するとトラブルの可能性が高くなるので、弁護士に相談しながら対応するようお勧めします。
5.代表者の債務整理が必要になる可能性
会社が破産するとき、代表者が個人保証や事業資金のための個人借入をしていれば、代表者個人も債務整理をしなければなりません。
借入額が大きければ自己破産が必要となり、個人資産まで失われる可能性があります。
会社が破産するときには事前に以下のような点を検討し、整理しておくようお勧めします。
- 個人保証していないか確認する
- 会社の事業資金のために借入をしていないか確認する
- 保証や借入をしている場合、自力で返済できるか検討する
債務整理が必要になりそうなら、具体的にどのような手続きを採用するかも決めなければなりません。状況によって適切な債務整理方法が異なるので、専門家に相談して対応を進めましょう。
6.生活の変化、就職について
会社が破産すると代表者は職を失いますし、個人破産したら自宅もなくなるケースが多数です。新たな住居や職を見つけなければなりません。破産手続き中も就職や引っ越しができるので、早めに新たな生活の準備を開始しましょう。
7.破産にかかる費用を確保
破産には予納金や弁護士費用などのお金がかかります。法人(会社・事業者)が破産するなら、だいたい100万円程度は手元にあると安心です。
8.早めに対応することが重要
法人(会社・事業者)の経営状態が悪化したら「早めの対応」が重要です。
早期に対応すれば私的整理や民事再生などによって会社を残せる可能性も高くなりますし、資金もある程度残っているので費用も準備しやすいからです。
時期が遅くなれば「破産」しか選択肢がなくなり、資金も少なくなって破産費用すら捻出できないといった事態になりかねません。
もしも今、景気の悪化やさまざまな社会現象の影響などにより経営が苦しくなっている企業様がありましたら、お早めにご相談下さい。当事務所ではかねてから金沢の中小企業へのサポートに積極的に取り組んでおり、最善の解決方法をご提示させていただきます。